松田の「これ知っとるか?」






第5回:<2000年度ベストレコード選出>の巻

2001.1
みなさん、あけましておめでとうございます。ベース担当の松田です。今年もよろしくお願いいたします。新年早々私は気合を入れて行くゼ、というわけでして、異例とも言える短いインターバルで更新をいたす次第です。

さて、今回は「昨年のベストアルバム」なんていうのを気軽に選んで紹介しようと思います。まあ、こういうのは私なんかにしてみれば聞き逃している良盤も多かろうわけで、後になってあれも良かったゼ、なんて思ったりもするわけですが、これはあくまで私がリアルタイムで聞いていたものの中から、特にこういうのが好きでハマッていたんだよなあ..というものを個人的な気分で選んだものに過ぎません。評価とかいうのではなく、いかに気に入っていたかという事が大切、なんて思うのですね。いや、こういうのって後になって読み直すと面白いんですよねー、なんて思いながら気楽にさくさくと選んでみました。ある意味、昨年の日記のような10枚かもしれません。以下、順不同です。


(蛇足)



私が購入する新譜は、多くてもせいぜい月に5枚くらいなのであって、購入する時点で厳選されているわけです(笑)。なわけで、ハズレが少なかった1年でした。そういえば、いわゆる冒険買いというのをしなくなって久しいような。幾分偏ったセレクトである事は間違いないです。





Yo La Tengo
"And then nothing turned itself inside out"(CD)

音の感じが異様にひんやりしていて、出た当初(1月)は「ほう、こう来ましたか」なんて思ってしまって実はあまり聴いていなかったのですが、夏頃になって聴き直してみて見事にはまってしまった。10月の来日公演は、ルー・リードと同じ日にリキッドルームで行われたのですが、私は一人でこっそりこっちを見に行っておりました(笑)。これがもうほんとにほんとに素晴らしかった!なんといってもアイラ・カプランのあのギターの弾き方がね(笑)、凄かった。表面的にはクールな感触がありますが、よく聴いてみると暖かみがあって、なによりも切実な感じが伝わってきます。特別贔屓にしたいグループのひとつ。
Saint Etienne "How we used to live"(CDS)
トゥ・ロココ・ロットとショーン・オハーガンがアレンジで参加しているシングルです。8分以上の意欲作で、アルバムでも肝といえる部分であった。いわゆる組曲みたいな構成なのですが、繊細なタッチで徐々に盛り上がっていく展開に心を掻きむしられる思いがします。そしてジャジーな後半がなんとも言えないアンニュイな余韻を残して終わります。何度も聞きたくなってしまうシングルであった。アルバムも良かったです。
Bell and Sebastian "Legalman"(7')
アルバム発売日の1週間前に出たシングルですが、アルバムには未収という鉄則を守っているのがまず偉い。っていうか、やる事が粋だなあ。しかもアルバムの雰囲気とは全然違うアッパーな悪ノリ加減で、ナゾ度高し。しかしピースでちょっとMODな感じもあってかっこ良い曲なのですね。B面はモノクローム・セットを思わせるインストで、これもなかなか怪しげです。前から思っていたのだけど、このグループは絶対にシングルのフォーマットの方が魅力を発揮するような気がする。



Hefner "We love the city"(CD)
ベルセバのプロデューサーであるトニー・ドゥーガン氏を訪ねてスコットランドで録音されたファーストアルバムから早3年、3作目のアルバム。愛すべきロンドンの冴えない野郎共3人組って感じで、非常に好感の持てるギターバンドです。今作はさらにラフというかおおらかになった印象がありますが、基本的にはぜんぜん変わっていなくて、良い。アメリア・フレッチャーがゲストで参加していて今までよりも華があるかな?英盤では限定でスタジオライブ盤との2枚組も出ているので、要チェックです。先に国内盤の方が出たので私は2枚買うはめになりました。


Built to Spill "Live"(CD)
最もライブを観てみたいバンドのひとつだったのだけど、なんとなく来日が実現しなさそうなだけにうれしいアルバムでした。実際ライブだとどうかな?と思っていたのだけど、突き抜けるような高いテンションが開放的な71分間を堪能できます。とにかくニール・ヤング直系「コルテス・ザ・キラー」の20分に及ぶカバーを聴け!って感じですね。ほか、メンバーの別ユニット、ヘロ・ベンダーズやラブ・アズ・ラフターの曲も演奏されているのがうれしい。


Madonna "American pie"(CDS)
ラジオで耳にして「これ誰?」と思っていたらマドンナだった。良い曲ですね。これの前のオースティン・パワーズの曲もカッコ良かったですしね、なんて思ってアルバムを買ってみたのですが、おまけっぽく収録されているこの曲がやはり一番好きというのが結論でしたねえ。ちなみにこの曲はドン・マクリーンのカバーなのですが、原曲よりも断然良いと思う。


Ivy "Long distance"(CD)
どの曲も歌心みたいなのが溢れていて、目下のお気に入り。今もへヴィー・ローテーション中です。妙にメジャー感があります。アストラッド・ジルベルトみたいなドミニクの声が非常に好みなんです。ちょっと前の渋谷系みたいな感じもあって、なかなかお洒落だゼ。もう若くないであろう素敵な貴女に聴いていただきたい。なーんてここは明朝体で(笑)。Tahiti80のフロント・アクトとしてひっそり来日していたそうなのですが、観たかったなあ。

High Llamas "Puzzle bee"(CD)
今回のは勢いでポンっと作ってしまったような雰囲気がありますが、あいかわらずクオリティが高いですよねえ。ちょっと後戻りしたかのような印象がありますが、でも戻った位置が前とは違う場所になっていた、みたいな感じで興味深い。リンク具合が気になるステレオラブのアルバムもなかなかカッコ良かったです。でもやっぱりハイ・ラマズの方が私は好みなんだなあ(と毎回言ってるオレ)。


Paul Weller "Heliocentric"(CD)
ポール・ウェラーさんについては、ソロになってからは特にそれほど熱心なリスナーではなくなってしまった私なのですが、このアルバムはとても気に入ってしまった。ソロ作ではこれが一番良い感じのアルバムではないかな。ほどよく肩の力が抜けて、一聴した印象だと「枯れてますなあ」なんて思ってしまうのだけど、やはりどこか熱い感じがあって、なんとも言えないんですね。いぶし銀とはまさにこういうのを言うのかも。10曲目の"Loveless"は、田島貴男氏が在籍していた頃のピチカート・ファイヴみたいになっていてビックリしました。ジャケットもカッコ良いですね。
Birdie "Such a sound"(CDS/'7)
昨年末ギリギリで購入したバーディの新曲は、かつて無かったような速いテンポの曲で、ロックな感じがグーですねー。特にタイトル曲は、ここへ来てようやく角を出したかのようなふわふわと攻撃的な雰囲気がシビレます。ハモンド・オルガンにアコギという編成がカッコ良いなあ。これもまたMODの現在進行形というかなんというか。アルバムが楽しみです。

という感じで、ほかにもゴー・ビトウィーンズまさかの復活アルバムとか、ドアーズをサンプリングしたファットボーイ・スリムとか、嬉しくなってしまう作品はいろいろありましたが、きりが無くなってしまうので割愛いたしました。今年はさらに素晴らしいレコードと出会いたいですね。




では、2000年にさよならを。
イアン・デューリーとカースティ・マッコールにこの駄文を捧げます。


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第1回:The Flaming Lips ”Zaireeka” の巻(2000.4)
第2回:Dolly Mixture ”Demonstration Tapes” の巻(2000.5)
第3回:Various Artists“Caroline Now!”の巻(2000.8)
第4回:長谷川和彦監督作品「太陽を盗んだ男」 の巻(2000.12)

身内、知り合い関係の作品は、ちょっと社交辞令っぽいので、ここではあえて外してしまいましたが、昨年は大いなる出会いがたくさんありました。今年はいよいよLouのアルバムも出る事ですし、負けないゼ。