松田の「これ知っとるか?」

第6回:Lou “Search & Love”の巻

2001.3

みなさん、こんばんは。
今回はLouのファースト・アルバム「Search & Love」の発売を記念して、不肖わたくしがその制作裏話や曲目解説なんぞを交えつつ、語ることにします。いいじゃないか(笑)。というかこういうのは常に余計な事ではあるのですが、少しでもこのアルバムを楽しんでいただくきっかけになるとしたら嬉しい、なんて思うわけです。まだ買っておられない方は、すみませんが今すぐ買いに行ってください.(笑)。

はじめに。私がLouのバンドでベースを弾くようになったのは2000年1月のライブからなのですが、ドラムスの久保田氏と同様、現在に至るまでほぼレギュラーで参加させてもらっております。このメンツになってから、そろそろひとつの形が出来上がってきたかな、と思うようになった(Lou自身もあわせて変っていったのだろうか?)と同時にいろいろなお客さんが見にきてくれるようになった、そんな頃にレコーディングの話がタイミング良く浮上してきたのであった。このアルバム「Search & Love」に収録されている曲は、その頃ライブで演奏していたレパートリーが中心になっているのですが、プロデューサー・賀句氏のアイデアによって、レコーディングでガラリと変貌した曲もいくつか含まれています。元々Louの書く曲調は実に様々なのですが、そういった新たなアイデアの導入や、ゲストで参加してくださった方々のプレイによって、今まで見せることがなかったカラーが統一感をもってうまく引き出されているアルバム、と言えるような気がします。従来からのリスナーにとっても、なかなか興味深い展開を見せていると思うのですが、いかがでしょう。

レコーディングは全て、三田の「アワ・ハウス・スタジオ」にて、2000年7月10、11、15日のほぼ3日間という驚くべきスピードで行われました。初日でベーシックトラックをほぼ録り終え、2日目は歌録りとHONZIさんのバイオリン、ピートさんのサックス、笹部さんのパーカッション、いずみさんのアコーディオン等がそれぞれ順番に加わっていき、和やかに終った。3日目は残念ながら私は立ち会えなかったのですが、奥沢さん、シャケさん、三浦理恵子さん、ユカイさんが来てくださって、聞いたところによると、マジック・タッチな録音が着々と進んでいったのだとか。それにしてもこんな怒涛のスケジュールで、特に煮詰まる場面もなく仕上げる事ができたのは、それぞれのプレイヤビリティもさることながら、賀句氏の的確な判断力及びエンジニア柳田氏の機敏な対応力を抜きには語れないと思います。あとはLouの人徳、というのも一応加えておきましょうか(笑)。リスペクト。


では各曲の解説です。

1.Search & Love
アルバム・タイトルにふさわしく力強い内容をもった歌で、この中では最も新しい曲です。元々は全然違うアレンジで、一旦は立ち消えになるかと思われた曲ではあったのですが、賀句氏のアイデアを元にこのようなスタイルで完成しました。60年代的なパーティー・チューンというか、なかなかイカすムードがあって、Louとしては割と珍しいタイプの曲かもしれません。ギターは全編シャケさんで、なんでもあのスタジオにあるでかいマーシャルで、轟音で弾きまくっておられたのだそうです。特にDメロで見せるスライドは、彼自身が持ち寄ったアイデアで、バッチリとこの曲を表情豊かなものにしています。キュートなコーラスは三浦理恵子さん。当たり前の事ではあるんですが、ほんとにあの声なので感動したっス。この曲をライブで演奏している時は、いつもほんとに楽しい。

2.リカ
ややレイドバック気味なラテン・グルーヴ的ノリで、ライブでは最後にやる事が多い曲ですが、これをやる時は、ほどよく力が抜けていい感じになります。ここではさらにパーカションとサビのアコーディオンが異国情緒な?味を加えています。この曲はちょっと不思議な詩なのですが、私的には普段のLouに最もイメージが近い世界かもしれない、なんて思っております。リリカルな雰囲気を醸しているギターは奥沢さん。HONZIさんのバイオリンも同様で、なんとなくみんなで同じ方向を向いてぼんやりしている感じがいいなあと思います。ちなみに「リカ」さんというのは実在するお友達で、私も一度お会いしたことがあるんですが今はニューヨークにおられるんでしたっけ。これは結構古い曲で以前に、とあるオムニバスCDに収録されたこともあるそうです。

3.苦い約束
ミニ・アルバムにしてデビューシングルのタイトルになっていた曲でして、さぞかしライブでも必ず演奏するような代表曲、と私は思っていたのですが、どうやらそうでも無かったようで、なぜかLouは一時期、この曲をあまり演奏したがらなかったのですね。まあ、心情的な変化が起こっていたのかもしれないし、単に飽きたという事かもしれませんが(笑)それはさておき。これも賀句氏のアイデアによって大胆にアレンジが変わって、そのあたりの微妙なニュアンスまでが図らずとも反映されているような気がしています。Lou曰く「奥沢さんのギターを録っている時は涙がチョチョ切れたよー」だそうですが、HONZIさん、三浦理恵子さんも素敵なトーンを加えておられます。最近のライブでは、ほぼこのアレンジで再び演奏するようになりました。

4.サルビアの花
言わずとしれた早川義夫さんの曲のカバーですが、一部コード進行を変えているせいか、オリジナルとはやや趣が異なった仕上りで、ピート氏のサックスによってさらにムーディな感じになりました。早川さんのファンの方にもぜひ聴いていただきたいヴァージョンになっております。しかし、まさか早川さん御本人からコメントをいただけるとは思わなかったですね。しかも大変ありがたきお言葉。これをきっかけにこの曲が再び脚光を浴びたりすると面白いなあとか、例えば野島伸司あたりのドラマにこのヴァージョンで使って欲しいよねとか(笑)レコーディング中はそんな話をしておったのですが、どうやらLouは半分マジで考えている模様ですので、どなたか野島さんの知り合いの方がおられましたら、連絡をください。仲良くしましょう(笑)。

5.くぼみ
ライブでは割と人気のあるレパートリーのひとつ。一見ポップな感触がありますが、実はなかなか複雑な構成の曲で、歌詞もややヘビーな内容になっており、ついついテンポが加速しがちな曲でもあります(笑)。でもこの曲は、これ以上にシンプルにはなりえないかもしれない。というか、これはこれで完結しているような気がするのです。仮にどこか不完全なところがあったとしても。今回のレコーディングは、この曲と「熱情」からスタートしたのですが、両者にはある種の緊迫感みたいなものがうまく記録されているように思います。

6.私生活
ドラム、ベース、ピアノという編成で、ライブではよくオープニングで演奏していた曲。ここでもシンプルなアレンジで収録されて、どこかこじんまりとした印象を与えてしまうかもしれませんが、私にとってはこのバンドの原点、みたいな位置付けの思い入れがある曲です。スタジオでは確か1回しか演奏せず、そのまま使っているのがこのトラックではなかったか。それなりに味わいのある出来だと思っています。

7.怖くない
こういった、いわゆるシンガーソングライター然としたタイプの曲は、なかなかバンドアレンジでストレートにやり難いというか、ピアノだけで歌われた方がかえって良かったりすることが多いですよね。でもこれはなかなか面白いアレンジになっているのではないだろうか。以前のバンドメンバーであった高橋さんのベースは、私とは大分異なるスタイルを持っておられましたが(彼はなかなかのテクニシャンです)、彼がこの曲で弾いていた印象的なラインを私はほぼ、そのままなぞっています。そこへ応じるように絡んでくるフルートのパートは、いずみさんが持ち寄ったフレーズです。ちなみにレコーディングでは、ヴォーカルのガイドとして、ピアニカみたいな音色のキーボードで歌メロ・パートが入れてあったのですが、それを聴きながら発見したことがひとつ。これって、ゆったりめのレゲエかもしれない、ということです。絶対ハマるに違いないと思ったのですが、今度試してみませんか。

8.LOSE THE RULE
で、そういういわゆるシンガーソングライター然としたLouのイメージでいくと、この曲はなかなか意表をつくかもしれません。約30分のライブでこれをやるのとやらないのとでは、印象も大きく異なるようでした。というか私も最初は、ちょっとびっくりであった。ライブでシーケンサーを使う曲は他にもいくつかあるのですが、このアルバムでは唯一この曲が収録されました。ここではユカイさんのワイルドなハープが曲全体の狂気を煽っていて、この歌世界をさらに暴走させています。そういえばこれのいわゆるサビの部分になると、各プレイヤーが一斉にバーストしまくっているので、ミックスが大変でしたね(笑)。

9.熱情
HONZIはこの曲のベーシック・トラックを2回ほど通して聴いて、一音目に発したのがこれの間奏で聴けるあの音なのだった。思わず「おおー」と声を揃えてしまった私達であった。あの瞬間の、何とも言い表わせない感覚を何度も反芻できるという意味で、このアルバムは充分な価値があると私は思う。当初、HONZIはこの曲に参加する予定では無かったのですが(Louは曲目を勘違いしていた・笑)、こういったある種の偶然が傑作を生むものなんだなあと本気で思っている次第です。この曲も元々は全然違うアレンジだったのですが、賀句氏のアイデアによってこのように発展しました(センシティブなギターも賀句さんです)。私はこのテイクが本当に大好きで、「ベルベット・ナイト」でもDJとしてかけた事があります。

10.Like A Little Child
この曲については何も言う事がありませんが、あえて挙げるならばひとつだけ。最初にこの曲を聴いた時「この歌はピアノだけで充分」と思い、バンドでアレンジする事を考えたりする必要がなかったということです。で、そう思ったのは私だけではなくて誰もが同じようにそう思っていたということです。

11.リカ(アコースティック・バージョン)
これのトラック・ダウンをしている時に、ギターとパーカッションだけでちょっと聴いてみたいなあと提案してみたら、なかなか捨て難い雰囲気があったので収録される事になりました。ほどよい余韻を残してアルバムは終わります。


というわけで長々と書いてしまいましたが、こんなんは全然読まなくても良い事ではありまして、とにかく聴いていただきたいのですよ。というわけで、今すぐ買い行きましょう(笑)。で何度も聴いて欲しいのです。

なお、このレコーディングの後にギタリストとして上村氏(ウエサン)が加入した事によって、現在のラインナップでの演奏は、アルバムの音の感じからは更に発展しているかもしれません(そういう事はなかなか自分達では気がつかないものですが)。そのあたりをライブを観に来て確かめていただきたいですねー。最近は妙にいい感じになってきてると思うんです。

では。




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第1回:The Flaming Lips ”Zaireeka” の巻(2000.4)
第2回:Dolly Mixture ”Demonstration Tapes” の巻(2000.5)
第3回:Various Artists“Caroline Now!”の巻(2000.8)
第4回:長谷川和彦監督作品「太陽を盗んだ男」 の巻(2000.12)
第5回:2000年度ベスト・アルバムの巻(2001.1)
(蛇足)


Lou
“Search & Love”


2001年3月21日
発売

MIDI Creative CXCA-1078
税込価格 2800円
(税抜価格2667円)











ただ、トラック・ダウン(要するに録音した各パートを一つにまとめる作業でミックス・ダウンともいいますね)は、わりと時間をかけた方かもしれません。一旦落としたものをプロデューサー自ら持参したMDラジカセで再生してみて、ひとつひとつ「響き方」をチェックしたりしておられました。 実は当初、全体にリバーブがかった音質感が個人的には少々違和感があったのですが、賀句氏曰く「80年代のマーティン・ハネット的空気感を意識した」とのことで、確かにこれはこれで独特の雰囲気があると思います。なるほどですね。
























Lou
“Search & Love”


絶賛発売中(笑)!
MIDI Creative CXCA-1078
税込価格 2800円
(税抜価格2667円)
ダサいレコード店には置いていないかもしれないので、大変お手数なのですが、予約していただくとありがたいです(笑)。




























Lou
“Search & Love”


ひつこいようですが(笑)、2001年3月21日発売
MIDI Creative CXCA-1078
税込価格 2800円
(税抜価格2667円)

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Lou
“Search & Love”


2001年3月21日
発売

MIDI Creative CXCA-1078
税込価格 2800円
(税抜価格2667円)
くどいようですが(笑)、万一お店に置いてなかったら、ライブ会場で買うという手もありますね。

・4月6日(金) <LOUレコ発ワンマンライブ> 下北沢ロフト

・4月8日(日) <LOUレコ発ワンマンライブ第2弾>難波BEARS

・4月9日(月)(ジャッカル/ピジョンズ/LOU)京都NEGA-POSI

詳細はトップページにて!