松田の「これ知っとるか?」

第7回:Honzi”Two”の巻

2001.5

みなさん、こんばんは。おかげさまで、「これ知っとるか」のコーナーをこちらに設立して1年を迎える事ができました。ありがとうございます。更新もままならず、果してどれだけの方がご覧になってくださっているのかも、いまひとつ分からなかったりするのですが、「見ましたよ」なんて言われると内心「うるせえなあ」とか思いながらも(やはりちょっと照れくさいですよね、そういうのは)、実はとても嬉しいです。そうは見えないかもしれないけど(笑)感激してます。本当です。で、今回は1周年記念ということで、そういった照れを省みないかのごとく独白調で行かせていただきます。

実は私には、誰にでも内緒にしている事があるんです。でもそれは今更隠すことでもないかな、と最近になってふと思うようになりました。なので今日は思い切ってここで打ち明けてしまおうかなと思う。いや、やっぱり止めておこうかな。しかしここはやはり、言っておいた方がいいような気がする。でもこれは本当にデリケートな類いの話なので、できればここだけの話にして欲しいです。一度しか言いませんが、私は実は天使なのです。

弁解するつもりはありませんが、天使というのは、そうでない人が思っている以上に、意外にそこらへんにいるようです。比較的有名なところでは例えば「刑事コロンボ」役をやっていたピーター・フォークとか、あとロック系の人でいえばニック・ケイブがそうです。東京でも何人かの天使の人とお会いしたり、すれ違うだけだったりする事があります。そんな時はお互い「オウ、楽しくやってるかい」なんて顔をするのですが、しかし彼ら(彼女ら)もまたそれをひた隠しにしているので、一般的には表面化していないのが実状です。私らにしても、わざわざそれを確認するかのような事を言ったりはしません。そうする必要がないからです。ようするに、わかるという事です。でも、自分がそうと気づいていない天使の人もごく希ではありますが、時々いるみたいなんですよね。しかし実際はどうなのかな?と私は思う。というのも、彼ら(彼女ら)の嘘は、とにかく完璧なのだ。

逆に天使のふりをしている普通の人も時々います。しかし私らにはそれを一瞬にして見抜く事ができます。そしてそういう不吉な人とはできる限り接触しないようにします。そういう人と一緒にいても、ロクな事がないからです。これは経験的にいって、断言できます。

私が思うに、天使というのは世の中的にわりと美化され過ぎているような気がするのだ。実際は、そんな大層なもんじゃないんですよ、本当に。例えば、必ずしも無垢な存在であるという訳ではないです。酒も飲むし、煙草も吸う。実にいろいろな性格の人がいます。擦れた感じの人だってもちろんいます。どちらかと言うと不完全なところが目立つくらいの人が多いかもしれない。少なくとも私がそうです。そのあたりは普通の人と全く同じというか、あるいはそれ以下かもしれません。私は長い間、その事で少なからずコンプレックスを感じてきました。こうして勇気を出して打ち明けても、実際のところはせいぜい「何言ってんだオメー」といわれるのがオチなんです。よって、私も今の今までひた隠しにしてきました。それでも親しい人には「やはりここは言っておいた方がよいかな」と思ったことだって何度もありました。でも結局のところ、なかなか言えないでおりました。ついつい本能的に隠してしまうのだ。おかげで気苦労も多く、正直なはなし「やってらんねえよな」と思う事が何度もあったのです。でも今となっては、そのあたりの事はだんだんどうでも良くなってきました。大人になったということかもしれません。なんつって。

しかし中には、誰がどう見ても「凄い」と思うような天使の人もいます。私がお会いしたことのある天使のなかでは、Honziさんがまさにそうでした。といってももちろん、直接本人とそのような話をしたわけではありませんが、ようするに私にはわかるという事です。この話は内緒だぜ。誰にも喋っちゃいけないぜ。



いや、もういいかげん冗談はこのくらいにして(笑)、この前の4月のライブの時にも感じた事ですが、Honziさんってほんとに優れた能力を持った、いわゆる天使っぽい人だなあと思ったのですね。そして後日、たまたまnino trincaのとあるTシャツのイラストを見て、それが確信に変わったのだった(笑)。で、"Two"というアルバムを聴きながら、私もがんばらなくちゃいけないな、と真に思ったんですよね。


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第1回:The Flaming Lips ”Zaireeka” の巻(2000.4
第2回:Dolly Mixture ”Demonstration Tapes” の巻(2000.5)
第3回:Various Artists“Caroline Now!”の巻(2000.8)
第4回:長谷川和彦監督作品「太陽を盗んだ男」 の巻(2000.12)
第5回:2000年度ベスト・アルバムの巻(2001.1)
第6回:Lou ”Search & Love” の巻(2001.3)


(蛇足)

Honzi"Two"

昨年9月にリリースされた2枚目の作品。Honziさんは連日、実に多彩なサポート活動で大忙しのようで、ついついヴァイオリニストというイメージを抱きがちなのですが、ソロ作品ではなかなかのマルチプレーヤーぶりを発揮しておられます。なによりも独特な間合いのあるヴォーカルが良いですね。このアルバムでは特に、一発録りと思われるテンションの高さと、隙間のあるアレンジがスリリングでありながら、どこか浮遊感のあるのどかな雰囲気が自然と漂っていて、初めて聴いた時から妙なデジャヴ感がありました。それはどちらかというと「個人的に」というようなものではなく、普遍性をもって感じさせる類いのものである気がします。不思議な感覚を呼び起こす音楽だと思いました。ジャケットのデザインやその紙質、トレイの形から、歌詞カードのQ数にいたるまで、なんだか徹底した世界を感じさせます。

なおこのアルバムには入っておりませんが、先日こっそり見にいったライブでは、フィッシュマンズのカバー”Just Thing”が披露されて、これがまたかなりヤバイ感じでした。彼女は類い希なヴォーカリストであったのだなあと今更ながら認識を新たにした次第です。
ちなみにその日はあがた森魚さんが飛び入りされて、なんと「サルビアの花」を歌われたりしておられました。いいものを見てしまった。