松田の「これ知っとるか?」






第10回:<2001年の収穫自慢>の巻

2002.1
みなさん、こんばんは。ベース担当の松田です。このコーナーは、私がごく個人的におすすめする音盤を紹介するものです。今回は年の初めという事で、昨年購入した中古盤を中心に、これぞという10枚をピックアップして、紹介いたします。いわゆる「ベスト」というのではなくて、「レコード・コレクターズ」という雑誌でライターの方々がやっているような、ああいうやつです。しかし、私はあまり高価なものには手を出さない方針なので、いわゆるコレクター・アイテムというのとも、ちょっと違うかもしれない。なので単に珍しいものとなると完全に力不足になってしまうわけで、ここは単純に「これぞ発掘!」とか「ええ買い物しましたわ!!」というふうに、一人で盛り上がった音盤を、といった角度からセレクトしてみました。しかしながら、なかなか収穫のあった一年ではあったかもしれない。まあ、手に入りにくいような音盤を紹介したりするのは不毛というか、どこか後ろめたいものがあるですが、今回についてはまあ、たまには自慢話も良いかな、ということで(笑)軽く読み流していただきたい。


(蛇足)


去年は新譜も良いのがたくさんありましたが、10枚選ぶとすると去年とほとんどメンツが同じだったりしてしまう。なんていうか進歩が無いというか、頑固というのか。あまり新しい物に手を伸ばしてなかったのは事実ですが。






Ivy "Lately"('10)
確かこれがデビュー盤で、同年に出たファースト・アルバムには全て未収録の5曲入シングルなのですが、ええ、持っていませんでした。これには後期オレンジ・ジュースのカバー"I Guess I'm Just A Little Too Sensitive"が入っているというので、かなり気になってたのですが、これが原曲とはまた違う雰囲気のアレンジになっていて、とても良かったです。この頃はまだ今よりももっとラフな雰囲気の音なのですが、しかし既に完成されている感じがあって、これはこれで非常に好き。こういうのを「雑貨屋さんで聴く音楽」と勝手に私は分類したりしていますが、こういう音楽がここ一年はジャストな気分でした。94年作。


Chris Clark "Soul Sounds"(LP)
これはちょっと高かったのだけど、CDでは出てないみたいだし、まあいいか!!ということで購入。7、8年前に出てた"Hitsville USA The Motown Singles Collection1959-1971"という、無人島に持って行きたくなるような素晴らしいCD4枚組ボックスがあって、その中に入っていた"Love's Gone Bad"という曲がまさに必殺モノで、この人の名前だけは長い間チェックしていたのですが、去年ようやくこれを発見。で、アルバムにもその曲の雰囲気を期待していたのですが、どちらかというと、わりと静かめの歌を歌う人なのであった。しかし、この時期のモータウンのレコードは非常にイカしてますねえ。67年作。




Bobby Taylor & The Vancouvers (LP)
これも「モータウン・レア・グループス」という、わりと無名の入手しにくい曲ばかりで構成されたコンピ盤CDに入ってたのを聴いて、チェックした次第。この人達は、いわゆるコーラス・グループではなくて、演奏もやる人達のようですが(実はよく知らない)、モータウン・マナーを忠実に守った音、というか微妙なポジションのソウル・ミュージックという感じで私のツボでした。テンプテーションズの"It's Growing"をタイトかつコンパクトなアレンジでやっているのがとにかくカッコ良くて、B面ばかり聴いています。プロデュースはベリー・ゴーディJr.。ほんとにこの頃のモータウンの音はイカすのな。これはわりと普通の値段で買いました。69年作。


Dolly Mixture "Demonstration Tapes"(2LP)
「これ知っとるか」第2回で取り上げたアルバムのオリジナル盤。イギリスの某ネット通販サイトでたまたま見つけて買いました。内容については長くなるので繰り返しませんが(笑)これ、レーベルは2枚とも裏表真っ白で、ジャケットのタイトル部分はスタンプで押されていて、3人の直筆サインと手書きのナンバリング、楽しい手書きの1色刷りライナー(というか曲目表記)という手作り感がグッときます。ちなみに米国音楽のレーベルの休止に伴って、告知されていたCDの再発は未だに発売されていないようです。しかしアメリカの某インディ・レーベル(名前失念ですが)から近々復刻される予定があるそうです。


Jane Birkin "Je T'aime Moi Non Plus"('7)
これも通販の際、ついでで購入したイギリス盤のシングル。説明は不要ですね。いやもうほんとに、これが家に届いて、封を開けたときの盛り上がり値はマックス状態だったかもしれない(笑)。B面は"Jane B."ですが、そんな事はもうどうでも良いです(笑)。


Velvet Underground "Squeeze" (LP)
ルー・リード脱退後にダグ・ユールがベルベット名義で出した、一応公式の5作目なのですが、あまり知られていないかもしれないアルバム。去年はダグ・ユール絡みの音源がなぜかCDで発掘されたりしましたが、やはり彼自身は当時ベルベット名義で活動するのは苦痛だった、との事で、そんな話を知ってちょっとだけ胸を痛めたりしました。彼はコンポーザーとしてはなかなか才能のある人ではないかと私は思っているのですが、このアルバムなんかを聴くとよくわかる通り、いかんせんベルベット・アンダーグラウンド的なそれではないのだった。ちなみにこれは2月にロンドンに行った時にReckless Recordという中古屋さんで買いました。これ、確か賀句さん持ってないんですよねー、うしし(笑)。



V.A. "Beggars Banquet"(CD)
これもロンドンで購入。同名アルバムを曲順通りカバーしたオムニバス盤で、参加アーティストは割と地味目なのですが、エドウィン・コリンズ+ロバート・フォスター+グラント・マクレナン+デビッド・ラフィという、オレ的にはネオアコ・オールスターなメンツによる「悪魔を憐れむ歌」で始まり、イアン・マクナブ+マイク・スコットによる「地の塩」で終わるのがたまんねえっス。98年にプロモ盤のみとして作られたものだそうですが、こんなの全く知らなかったし、見た事も無かった。ちなみにジャケットはLPサイズなのですが、中に入ってたのはCDだった。


シャワー "あっ!という間にビーチ・ラブ" ('7)
タイトル曲は鮎川誠さん作曲で、作詞は森雪之丞氏、アレンジが故・大村憲司氏との事です。なかなか興味深い組み合わせ。いわゆる歌謡曲なのですが、実にロケッティというかブリリアントな佳曲と思います。ちなみにシャワーというのは確かMCシスター出身のモデルさんたちによるグループで、ジャケット左端に写っているのは村上里佳子さんですね。確かこのメンバーのうち、誰かが鮎川さんのファンだったとかで、MCシスターでその人と鮎川さんの対談記事が出ていた記憶があります。私の姉が買ってたので読みましたです、はい(笑)。これはちょっとだけプレミアがついているシングルのようですね。82年作。

The Mugwumps(LP)
後にママス&パパスを結成するキャス、デニー、ラヴィン・スプーンフルのザル・ヤノフスキーらが在籍した事で知られるマグワンプスの音源集。An Histric Recording と書かれているので、これはある程度彼らが成功してからリリースされたアルバムなのでしょうか(年代とか明記されていないのです)。内容はいわゆるグッド・タイム・ミュージックといった趣きなのですが、例えばラヴィン・スプーンフルほどは洗練されていないかもしれない。どこか学生バンドみたいな雰囲気があって、和みます。こういうアルバムは好き。

Cybil Shepherd "Mad About The Boy"(LP)
この人は「タクシー・ドライバー」とか「ラスト・ショー」に出ていた女優さん兼ジャズヴォーカリストで、このアルバムはいわゆるカフェ・ミュージック的なもののひとつとして、再評価されたりしているみたいです。で、何故か去年クレプスキュールから再発されてたので、買ってみました。なるほど、ボサノバあり、ルグランあり、ガーシュインありで、なんともアダルティかつナウなムードが満載のアルバムであった。アナログで聴くというのが雰囲気ですね。スタン・ゲッツも参加。70年代後期の作品のようです。



というわけで以上、2001年の発掘10枚でした。たかだかレコードごときに、とは言わないですけれども、中古レコードの値段なんて実にいい加減なものだし、不当に高いプレミアのついたレコードを買って悦に入ったりするのはもうやめたいぜ、と改めて決意する反面、やっぱり欲しい物は欲しい。つまり欲しい物は買う(笑)。ただ今年はもうちょっと考えた買い方をしような、と漠然とですが思います。2002年のテーマはDig the new bleed!で行くぞ。って感じかな。何言ってんだかわかんないですけど(笑)今年もよろしくお願いします。




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第1回:The Flaming Lips ”Zaireeka” の巻(2000.4
第2回:Dolly Mixture ”Demonstration Tapes” の巻(2000.5)
第3回:Various Artists“Caroline Now!”の巻(2000.8)
第4回:長谷川和彦監督作品「太陽を盗んだ男」 の巻(2000.12)
第5回:2000年度ベスト・アルバムの巻(2001.1)
第6回:Lou ”Search & Love” の巻(2001.3)

第7回:Honzi ”Two” の巻(2001.5)
第8回:「水不足問題について考える」 の巻(2001.7)
第9回:「グラスゴーの彼方に」 の巻(2001.10)
10枚選んでみて気がついたのですが、もうちょっと自慢しときたいやつ、あるかも(笑)。昨年はDJをさせていただく機会が多かったせいもあるのか、数は多く買ったような気がする。
世の中には、「レコード家計簿」なるものをつけているマメな人もおられるようですが、オレもやった方が良いのかもしんなーい。